AIの民主化とは?グーグルクラウドが目指す未来

グーグルは3月に開催された「Google Cloud Next ’17」にて、クラウドの未来について発表しました。発表の中でグーグルは、AIの民主化(Democratizing AI)を進めていくと提言しています(参考: 日経ビジネスオンライン)。

今回はこのAIの民主化とはどういうものなのか、グーグルはどのような未来を目指しているのかを見ていましょう。

グーグル・クラウド・プラットフォームとは?


グーグル・クラウド・プラットフォーム (Google Cloud Platform)とは、グーグルの提供する企業向けのクラウドサービスです。

利用している企業には、「コカ・コーラ」、「スポティファイ」、「フィリップス」、「スナップチャット」などの有名企業があります。クラウドといっても、もちろんただのオンラインストレージではありません。提供されるサービスには、

  • コンピューティング
  • ストレージとデータベース
  • ネットワーキング
  • ビッグデータ
  • 機械学習
  • IDとセキュリティ
  • 管理ツール
  • デベロッパーツール

など多数のツールがあります(参考: Google Cloud Platform)。

グーグルクラウドはただデータを管理するだけでなく、預けられたデータを解析してより改善したり、管理を助けるための機能がてんこ盛りなのです。

AIの民主化とは?


ではグーグルの提唱する「AIの民主化」とはどういうものか見ていきましょう。

該当の部分は上の動画の1:39:00頃に登場します。Google Cloud Next ’17で発表された内容によると、

  1. 計算能力(Computing)の民主化
  2. アルゴリズム(Algorithms)の民主化
  3. データ(Data)の民主化
  4. 才能(Talent)の民主化

以上の4つのAIの民主化を進めようとしています。1.計算能力の民主化とは、機械学習(ML Engine)を用いたものです。ディープラーニングなどを用いてあらゆる機械学習を実現します。2.アルゴリズムの民主化とは、「Cloud Speech API」、「Cloud Vision API」、「Cloud Translate API」、「Cloud Natural Language API」の4つと新しい「Video Intelligence API」を用いたものです。これらは画像・動画・音声データなどをアルゴリズムで”自動的に“解析するツールです。3.データの民主化は、買収したKaggleを用いて膨大なデータの解析の最適化を行うこと。4.才能の民主化は、「Advanced Solutions Lab」という企業とグーグルクラウドが協力して課題解決に役立てる研究のことです。これら4つを通して、グーグルはAIを民主化しようとしています。

アルゴリズムの民主化


グーグル・クラウド・マシーンラーニング(Google Cloud Machine Learning)には、グーグルが開発し社内でも使われている高度な「機械学習機能」を、誰でも簡単に利用することができます。AIの民主化のうちの「アルゴリズム」の民主化にあたる以下の4つをご紹介します(参考: Cloud Machine Learning)。

  • パワフルな画像検索
  • 高度な音声認識
  • 強力なテキスト分析
  • すばやく動的な翻訳

まず「パワフルな画像検索」は、「Google Cloud Vision API」を用いてグーグル画像検索に用いられているような技術を一般企業でも使うことができます。膨大な画像から写っている物体を自動的に仕分けすることが可能です。ちなみに動画にも対応した「Video Intelligence API」も発表されました。「高度な音声認識」は、「Google Cloud Speech API」を用います。YouTubeに使われている自動文字起こし機能を一般企業が導入することが可能になります。音声の文字入力を手作業でやっている企業に導入すれば、人件費削減につながるでしょう。「強力なテキスト分析」は、「Google Natural Language API」を用います。テキストデータを分析し、書かれている内容や感情(肯定、否定)を認識することが可能です。膨大な数のユーザーからのフィードバックやソーシャルメディアの投稿を手作業でチェックせずに、自動的に解析してくれます。「すばやく動的な翻訳」は、「Google Cloud Translate API」を用いて自動的に言語を翻訳します。グーグル翻訳のような技術を自社のサービスでも利用可能にするようです。これらの高度なアルゴリズムを、グーグルクラウドを用いることでどこの企業も導入可能になるようです。

グーグルの目的とは?


ではなぜグーグルは自社のAI技術を一般企業にも解放するのでしょうか。グーグルの目的はシンプルにデータの収集であると考えられます。このようなAI技術は、より多くのデータが集まるほどに精度は向上していきます。今は100%の完成度ではなくても、利用者が増えればその分より多くのデータが集まり、完成までの距離が縮まるのです。そのためグーグルは自社のAI技術を民主化して、積極的に使ってもらおうとアピールしているのではないでしょうか。

最後に


かつて軍事向けだったコンピュータが、パーソナルコンピュータとして一般企業や庶民に解放されたように、AIもやがては庶民に解放されていくのかもしれません。グーグル翻訳などはすでに私たち庶民にも開放されていますし、今は企業向けの機械学習なども一般ユーザーが利用するようになるのかもしれません。誰でも高度な機械学習や、データ解析を利用できる日が近づいているのです。そうなると、世界のどこかで天才少年が機械学習を応用したさらに画期的な「何か」を発明してしまうかもしれません。これからAIの民主化がテクノロジーの歴史に新たな変化をもたらしていくことは間違いなさそうですね。